Are you ready ?
『あら。どうして?』
『今日のクラスマッチで、いぶと約束してるんです。俺が優勝したら――俺の願い事ひとつ、いぶが叶えるって。』
『あら。イブちゃんも大胆!』
お母さんの驚くところはそこだったらしい。
娘の行動に驚いている。
『…ってことは、壱くんの願い事は、いぶなのね?』
『――はい。お願いします。1日だけ、いぶを俺にください。』
そう言った壱君の顔は凛々しく、男らしい。
いつもはへらへらとしている壱くんの、意外な一面。
…を、私は見逃したのだ。
『――いいわ。まぁ、1日と言わず、3泊4日にしたら?』
『・・・ぇ?』
『ほら~、今日は金曜日じゃない?明日は土曜だし、それじゃ足りないでしょう!月曜まで、外泊OKよ!月曜の夜には、イブちゃんを帰らせるってことで!』
なんともアホな母親だ。
能天気と言ったらいいのか。
いまどき、娘の外泊を、しかも3泊4日OKなんて、前代未聞である。
『い、いいんですか?』
『避妊はしっかり、しなさいよね☆』
『はい。』
お母さんのウインクに負けない壱くんの笑顔。
そんな2人のところへ――
ガタッ
「壱くんっ、おまたせ!…ってあれ?どうしたの?2人とも。」
用意を終えた私が入って来た。
『何でもないよ、行こう。いぶ。』
「い、壱くん…?」
『いいから、いいから。』
笑顔でやってくる壱くん。
…が、何か怖い。
この状況についていけない私の肩を、壱くんがぐいぐいと押して、玄関へ。
「あっ、お母さんっ、行ってきます!」
『いってらっしゃい♪』
戸惑いながらも、私はお母さんに見送られて、学校へ向かった。