Are you ready ?
『私にとってみれば、イブは十分幸せなんだよ。お父さんがいなくたって、お母さんがいてくれてるんだから。私は――…2人とも、死んだから。』
「……っ」
そう。
美鈴ちゃんの両親は、美鈴ちゃんが6歳の頃、交通事故で亡くなった。
それから美鈴ちゃんは一人。
どれだけ泣いて、どれだけ苦しんできたかなんて、私には分からない。
でも、私は美鈴ちゃんの力になりたいって思った――…。
「…ごめんね、」
『いいんだって。私はこれでも――…両親の思い出は残ってるし。母が父の昔の話をして、父が照れてたことも覚えてる。ちゃんと私には2人の思い出があるの。でもイブには――…それさえも、ないんだもんね。』
「………。」
今は一人暮らしている美鈴ちゃん。
どうしてそんなに強いんだろう。
私だったら、お世辞でもそんなこと言えないよ。
「…美鈴ちゃん、すごいね。」
『え?何ー?良く聞こえない~!』
本当に美鈴ちゃんは逞しい。
私が美鈴ちゃんの力になりたいのに…私は美鈴ちゃんに力をもらってる。
「…ううんっ、ありがとう。また明日ね!」
『はいはぁい♪じゃぁ、またねっ!』
ついポロリと出てしまった本音を隠すように、私は電話を切った。