Are you ready ?
『…壱くんが、何だって?』
「へっ?…ぃ、いやっ、…な、なな何でもないよっ!?」
あー、噛んじゃった…。
これじゃぁ、お母さんに嘘ついてるってバレバレじゃない、私のドジ。
『全く、依吹は…。誰に似てそんな嘘一つもつけないのかしらね?』
「むぅー…。」
何よぅ…。
お母さんはよく、私にそんなことを言う。
お母さんに曰く、“嘘をつけることは泥棒の始まりなんかじゃない!大人の対応への階段の一歩なのよ!”らしい…。
『依吹は思ってることが表に出やす過ぎなのよ。社会に出たときどうするの?上司の誘いなんて断れないでしょう、依吹は。そういう時、感情を表に出してたらダメなのよ?笑って上司を良い気分にさせなきゃいけないの。そのためには、嘘の一つくらいは付けるようにならなきゃ!』
「はぁーい…。」
このセリフを、私は今までどれくらい聞いてきたのだろうか。
小さい頃からそう言われて、でも私は嘘なんてつけるような器用な人間じゃなくて。
今またそのことを言われても、私には何の言葉も届かなかった。