Hurt〜傷〜
どの位、殴られただろうか?

どの位、経っただろうか?

お母さんが、殴ることを止めた。

私は、全身の痛みに顔を歪めながら起き上がり、お母さんを見た。

私と目があうと、お母さんは泣きながら、私を抱きしめた。


「…ごめんね、純。お母さんは、ただ、純のことが心配で…。お父さんみたいに、ある日突然、いなくなるかもしれないと思って…。…純、本当にごめんね」


あぁ、まただ。

いつも私に暴力を振るった後、涙をながしながら謝るお母さんが嫌になる…。


「大丈夫だよ、お母さん…。私も悪いんだし、気にしないで…」


私はそう静かに、そしてお母さんが落ち着くように、優しくお母さんの肩を摩りながら言った。

お母さんは、目にいっぱい涙を溜めて、私を見つめた。


「…純、本当にごめんね。でも、いつも帰って来ると、純がいなくて、心配だったの。私は、本当に純のことを愛してる。それだけは信じて…」

「分かってるよ。…私の方こそ、本当にごめんなさい…」

「ありがとう、純。明日からは、ちゃんと私が帰って来るまでには、家にいてね?」

「もちろんだよ、お母さん…」

「じゃぁ、門限は8時だからね。私は、もう寝るわ。お休み」

「うん…。お休みなさい…」


私は微笑みながら、返事をした。

…そんなお母さんを、いつも優しく許してしまう私は、もっと嫌になる…。
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