乱桜-Midare Zakura-
あの日、いつものように『ひーくん』と一緒に公園で遊んだ帰りの話。
二人で仲良く手をつないで帰っていた道中、
二人の母親が現れた。
「ひーくんのお母さんとひかるのママだ!」
幼い自分が指さして言ったことも覚えている。
その時見上げた『ひーくん』の顔が急に険しくなったことも。
3つ上の『ひーくん』はませてるというよりも大人びていた。
「ひかる…」
「なぁにママ?」
近づいてきたママにあたしは聞いた。
「もうこれから、聖くんと遊んではいけないの」
「どうして…?」
幼いながらに回らない舌で気持ちを吐き出した。
「今日からひかるは聖君のお手伝いさんになるの」
「お手伝いさん…?」
「そうよ」
その時はわからなかったけど、今ならわかる。
(あたしは聖の召使なんだ…)
ほかでもない、大好きだったあの人の。
そんな突拍子もなく、
訳のわからない話を誰が信じる?