ティラミス
大学生最後の年の瀬。
今年も迷わず、実家に帰ることにした。
卒業論文は思うように進んでいないけれど、
滞り気味の進捗状況が
実家に帰らない理由になることはない。

新潟に帰るときは、東京駅でお土産を買う。
持ち帰るものは、いつも同じ。
甘いもの好きの女の子の間では
それなりに名の知れている洋菓子店のティラミス。
その値段は、
コンビニのティラミスが5つ買えるくらい。
大きさも量も家族で分け合って食べるのに丁度いい。

持ち歩きのお時間は、と店員さんに聞かれ、
4時間くらいです、と答える。

店員さんは、ちょっと困った顔をする。

3時間までの保冷剤しか準備できないのですが、と。

東京から新潟までは
2時間半の時間を見ていればいい。
私の生まれ育った町までは、
新潟から特急に乗り換えて更に1時間ほどかかる。
東京から実家のある町の最寄り駅までの間、
乗り換えは、新潟駅での1回だけ。
都内の乗り換えに比べて、ずっとラク。
それでも、4時間近くかかる。
こういうときに、新潟は遠い場所なのだと、思い知らされる。

店員さんは、
内緒で保冷剤を多めに入れておきますねと、余計に保冷剤を入れてくれた。
感謝の気持ちを述べて、お金を支払う。

新潟に比べれば、まだまだ暖かい東京。
少しあたたかい気持ちになって、私は新幹線に乗り込んだ。
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