【完】短編集~幼馴染み~
ひと気のない場所で、夏希は静かに涙を流した。

あたしは、そんな彼女を、抱きしめた。


『じゅん――……』


苦しそうな声に、あたしの心まで、押し潰されそうになった。


夏希が泣き終わり、そっと、彼女の体を離した。


「あんたは…夏希は、伝えないの?自分の、気持ち」

だって、ずっと、ずっと…一途に、想ってきたんだよ?


それなのに…

『伝えたって、夕陽を困らせるだけ、だし』

困るわけ、ないじゃん。
嬉しいに、決まってんじゃん。



『それにね、あたしは…夕陽が幸せなら、それでいいの。夕陽が笑顔でいれるなら、それでいい。夕陽が笑顔なら、あたしは幸せ。夕陽の幸せが、あたしの幸せ、だから』

なんで、“夕陽くん”のことばかり、考えるの。
“夏希”も、幸せにならなきゃ、ダメでしょ?
“夕陽の幸せが、あたしの幸せ”
どうして、なの?


『だからさ、ホントは涙出るなんて、おかしいの!』

辛いから、涙が出るんだよ。

あんたの流す涙は、おかしくなんて、ないんだよ。

むしろ、もっと、もっと…

泣いたって、いいんだよ。


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