【完】短編集~幼馴染み~
治療を受けた私は、廊下に置いてあるベンチに座っていた。
目の前では、ボロボロ涙を流す蒼ちゃん。

「蒼ちゃん、泣かないで?」
「けど、芽久ちゃんに…。芽久ちゃんの体に、傷がっ…」
「このくらい、大したことない」

私には、一生消えない傷跡ができた。

「僕の…せいでっ…」
「蒼ちゃんの、せいじゃないから。私が勝手にしただけ。私が、勝手に蒼ちゃんのことを守っただけ」
「っ、僕、もっと強くなる。強くなって、芽久ちゃんのこと、守る。だから、僕と結婚しよ?」

涙を目の中に溜め、説得力のないセリフ。
けど、凛とした、真剣な瞳。

「うん、いいよ」

私は、恋をした。

―――――………

こんな小さなときにした約束なんて、信じているほうがバカなのかもしれない。
蒼ちゃんだって、きっと忘れていると思う。
それに私、あのあとしばらくして、蒼ちゃんに言った。

『もう、あの傷はなくなったよ』

私のせいで、蒼ちゃんを縛りたくなかった。
ホントはまだ、残っている傷。
蒼ちゃんには、幸せになってほしかった。
けど、約束を信じている私って、矛盾してる?
ま、想ってるだけなら、いいよね。


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