【完】短編集~幼馴染み~
デパートを出て、ひと気のない場所に着く。

「ハァ…ハァ。いっちゃん、助けてくれてありがとう」
「…バカ…」
そう言ったと思ったら、ギュッと抱きしめられた。
「ば、バカ??」

そっと離され、見つめられる。
「なに、ナンパなんかされてんだよ」
「ご、ごめんなさい…」

緊張が解けたのといっちゃんのいつもと違う低い声で、どっと涙が溢れる。
「み、美亜!?わり、泣かせるつもりはなかったんだよ」
「ち、違くて!なんか、安心してら…なんでか分んないけど…涙でちゃって。
いっちゃんのせいじゃ、ないから!」

「…ムカついたんだよ。俺以外の男に触られて…」
……え?

「今日の美亜、いつも以上に…可愛くて。
んな短いスカート履いてっから、エスカレーターで後ろの奴にスカートの下見られるんじゃねぇかって思って先に乗らせるとかカッコワリィことしちまうし…」

あ……。

『お前、先に乗れ』
『他の人の迷惑になんじゃん?』

あの時の行動は、それで…?

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