【完】短編集~幼馴染み~
沙世ちゃんが持っていた紅茶をおいたとき――……

「敦志くんは、杏子と結婚しないの?」
「ブッ!ゲホッ…ゲホッ…け、結婚!?」
飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになってしまった。
「そ、結婚」
「さ、沙世さん…そんなポーカーフェイスでなにをおっしゃる…」
「あたしは真面目に言ってるの。敦志くんたち、付き合って何年目?」
「高1からだから…もう4年目くらいか?」
「でもさ、お互いタイムカプセル埋めたころから好きだったんだよね?」
「あぁ、まぁな」
「じゃぁさ…。そろそろ腹、くくってもいいんじゃない?」
「腹くくる…っつってもなぁ…」
「結婚する気はあるのよね?」
「そりゃ…いずれは、な」
「そうやってうじうじしてると、杏子どっかの野郎に持ってかれちゃうわよ」
「んなアホな」
「人の気持ちだってね、変わるの。ねぇ、敦志くん。女の子はね、待ってるの。
男の子からの気持ちを。言葉にしてほしいの。言葉にしなくちゃ、伝わらないの。
ただ思ってるだけじゃ、意味ないの。
敦志くん、男みせなさい」

沙世ちゃんの言葉が、重く、深く…胸に響く。

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