【完】短編集~幼馴染み~
あたしは隆也の腕を掴んだ。

「!?って、莉那か。どした?」

“どした?”じゃないよ―……。
「なに、してんの?」
「え?買物?」
「そうじゃなくって!なんでその子といるの!!??」
やだ、こんなこと言ったらあたし、超重い彼女じゃん。
超めんどくさい彼女じゃん。
けど、止まんない。
「クラスのやつに、買いだし頼まれて…」
「今日じゃなきゃ、ダメだったの!!??」
「え?てか、莉那まじどうした?お前らしくねぇじゃん」
「っ、…隆也、今日何の日か知ってる?」
「え?」
あたしは涙をこらえていた。
涙は、見せたくないから。

「お前の誕生日じゃねぇし、俺の誕生日でもねぇし……」
「…今日は…、付き合って1ヶ月目の記念日だよ…」
「っ!」
隆也にとっては、忘れる程度のことなのかな?
「莉那、俺っ「あ~、いいよ。気にしないで」
「莉那、ごめっ「ホント、いいから。1カ月なんて、中途半端だしね!1周年記念は、やろうね♪」
「り「じゃぁ、あたし行くね!買い出し?頑張って♪バイバイ隆也」
「あ、おう。じゃぁな」
あたしは隆也たちとは反対の方向へ歩き出した。
歩く振動で、我慢していた涙が溢れだす。
「っ…っ…、…っ」
止まらない涙で、視界がぼやける。

その時、誰かがあたしの腕を掴んだ。
もしかして、隆也?
そんな期待を抱きながら、振り向いた。
「莉那っ!!」
あたしの腕を掴んだのは――……
「おい、大丈夫かよっ!!」
いつものふざけている顔じゃなくて――……
「おい!莉那!」
真剣で、心配そうな顔をした――……
「ひ、さと…」

陽智だったんだ――……。

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