【完】短編集~幼馴染み~
「っ!」
陽智はあたしを見た瞬間……少し、顔が歪んだ。
あたし、そんなにヒドイ顔してんのかな…?
「ハハっ…」
「っ、笑ってんじゃねぇよ…」
「なんの、こと…?」
「…隆也のことだよ」
「っ!べ、別に…気にしてないしっ!普通に1周年記念やればいいだけだしっ」
「そうじゃねぇだろっ!」
陽智はあたしの肩を強く掴む。
「痛いよ、陽智」
「こんな大事な日に!他の女子とクラスの買いものしてたのが嫌だったんだろ!?」
「痛いよ、陽智――……」
「り……な」
「っ、心が……痛いっ!」
あたしはいつの間にか……ボロボロと涙を流していた。
「辛いトキは、泣けばいいんだよ」
「っ、ふぁ…くっ、…ぅ…っ…」
「莉那、こっち」
陽智はあたしの腕を引っ張り、人のいない場所へ連れて行った。
「…ほら、ここなら…誰もいねぇだろ。…いい加減、我慢しねぇでもっと泣け」
「ッ、ぅ、ぁ―――……っ」
こんなに涙を流したのは、初めてで――……。
今まで我慢していた分が、今――……、
流れ出した――……。

陽智はずっと、あたしの涙を拭ってくれた……。


陽智、
ごめんね。

陽智、
ありがとう。

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