【完】短編集~幼馴染み~
周りがキャァァや、ヒュ――や、うぉぉ、と叫んだと同時に離された唇。
健太はあたしに15番と記された割りばしを見せた。
「…さいって――!!!!」
あたしは思いっきり健太の頬を叩いた。
「ってーな!何すんだ…、っ、あお…い?」
「…ヒック……ッ……ッ」
涙があたしの頬を伝っていた。
周りが、慌てだす。
「男子最低――」
「おっ、俺は口にしろなんてっ…」
「言い訳すんなっ」
そんな男女の言い争いなんて、あたしの耳には入っていなかった。
夏弥が心配そうにあたしの覗き込んでいる。
「葵…ごめ「健太にとって、キスってなに…?」
「えっ…?」
「健太にとって、キスは…大したことないの?あたしは…、あたしにとっては、すっごく大事なんだよ?…キスは、絶対好きな人同士がよかった…!なのに…な…んで…ヒック…。こんな、王様ゲームでなんか…っ…」
「葵っ」
「健太の、バカッ」
あたしは駆け出した。
どこへでも良かった。
とにかく、1人になりたかったの。


あたしは、屋上に来ていた…。
「…っ、…っ…ヒック…」

辛い、辛い。

こんな一方通行な想い、嫌だよ――……。


あんな、想いがこもっていないキスなんて…


したくなかった――……。


あの時から、健太は…

あたしの心を、

かき乱してばかり。
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