For you
そうだよ。
やっと、やっと蒼は挨拶からもう一歩踏み出そうとしてたんだ。
「最近、少し話すようになってさ」
「うん、」
知ってるよ。
毎日、蒼のこと見てるもん。
廊下で一生懸命萌亜ちゃんと話てる蒼の姿、みてたよ。
「ちょっとは俺のこと見てくれてんのかなって思っててさ」
「ん…」
その後が聞きたくなかった。
蒼、蒼。
「なのにさ、俺なんて眼中にねーみたいにさアイツと手繋いで登校してきててさ」
「〜〜っ」
もう、どうしよう。
涙が止まらない。
蒼に背向けててよかった…
「お、れ。自惚れしててさ。ばっかみてー…」
蒼、泣かないで。
そんな震えた声をださないで。
「……」
「1年以上好きなのに、最近この学校来た奴に持って行かれるなんて…俺、ダサすぎっしょ」