For you
「さ、教室戻るか」
蒼はゆっくり立ち上がった。
あたしはこの時、
自分も失恋したことに改めて実感した。
あんなに泣くほど蒼は萌亜ちゃんのことが好きで、
そんなの失恋したのと同じで。
違うか…
あたしが蒼に恋した時から、あたしは失恋していたんだ。
「ほら、結城も立てよ」
差し出された手。
温かくて大きな、大好きな蒼の手。
「うんっ!」
その手を握りあたしは立ち上がる。
蒼、一緒に一歩。
本当に一歩だけ進もうか。
失恋のその後はどうしたらいいんだろう?
「あ、教室戻る前にトイレ!顔ヤバいでしょ、化粧…」
「いや、たいして気になんねーよ?」
そんな会話をしながらあたしと蒼は屋上をあとにした。