For you
「保健室行かなくて大丈夫なの?走れるの?」
「え、えっと…」
あたしの声は自分でもわかるくらい低くて、
萌亜ちゃんに嫉妬してるから声が低いのに何を話しかけているんだろうか。
「どうなの、萌亜ちゃん」
「だ、大丈夫だよ」
力なく言った萌亜ちゃんが何故か蒼とかぶって見えた。
…どこも似てないのに。
じっくりと萌亜ちゃんを観察する。
軽く巻かれたポニーテール、守ってあげたくなるような可愛い顔、小柄な体系。
これが、蒼の好きな人。
そう思うと無意識のうちに萌亜ちゃんの腕を掴む手に力がはいっていた。
「っ、結城ちゃん、痛いっ」
「え、あ、ごめん」
パッと離したけど、
うっすらと掴んでいた痕がついてて。
なに、してんのあたし。蒼の好きな人に痕つけて
「ごめん。冷やす?冷やしたほうがいいよね」
冷やす物持ってくるね、そう言って救護テントに行こうとしたら、
「だ、大丈夫!冷やさなくて大丈夫だから」
ニコッと優しく、
萌亜ちゃんが笑って言った。