For you
可愛いな。
なんて、思ってしまった。
あたしとは正反対で、萌亜ちゃんに勝つことなんて……出来ないかもしれない。
「次ー荻原、蕪木」
「あ、呼ばれたよ!」
「あぁ、うん」
萌亜ちゃんの顔が、少し、すこしだけ辛そうにみえたのは気のせいだろうか。
「ふふっ、お互い頑張ろうね、結城ちゃん!」
「…うん」
誰からみても冷たい態度を萌亜ちゃんにとっているのに、あたしに笑いかけてくれる。
…こんな子だから、蒼に好かれて、新倉海に好かれて、みんなに好かれるのかな――
「位置について」
あたし達の番がやってきた。
あたしと萌亜ちゃんはレーンが隣で、
蒼がこっちを見ているのがわかる。
でも、蒼が見ているのはあたしなんかじゃなくて、あたしの隣にいる――萌亜ちゃん。