For you




「よーい」

パァン――!



考え事に集中していたあたしはみんなより少しだけ後に走り出して、

慌てた結果


「わっ」


見事にこけた。


「いったー…」



派手にこけだぞ、これ。恥ずかしい…




チラッと前を向くと爆笑している蒼の姿が目に入った。


ムカつく。
そう思った直後、



「萌亜!!」



そんな新倉海の叫び声が聞こえて、あたしはそのほうを向いて…



「え…萌亜ちゃん?」




萌亜ちゃんが、倒れていた。


訳がわからなくて、傷の痛みも気にならなくて…

ただ、じっと新倉海が萌亜ちゃんをお姫様抱っこして連れて行くのをみていた。



「蒼…」



キミの辛そうな顔と一緒に。






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