For you
その日から蒼の“乙女みたいな恋話”が始まった。
「あのな、今日挨拶出来たんだ!」
「へー…良かったね」
「おうっ!」
嬉しそうに話すそうは本当に乙女だ。
挨拶だけで満足する今時の男子ってどうなんだろうか…
「おはようって言ったらおはようって言って笑ってくれたんだよ!」
「ふーん」
「結城、聞いてんのか!」
「聞いてるきいてるー」
なぜか、蒼の恋話は聞きたくなかった。
理由なんて分からない、いや、分かりたくなかったんだ。
「そういやさ、思ったんだけど俺!」
「急に話変わったな…」
「いいだろ、別に?」
「別にいーけど」
なんの覚悟もなくて、ただ突然に言われた言葉にあたしは固まった。
「お前の名前ってさー……」