偽りの恋人
[01]不公平な関係


「原。 ここ、誤字があるから直してきてもらえるかな?今日中に」

「…はい、申し訳ありません」

「ごめんね、細かい注文で」


そう思うならいちいち直させるな!

…と手渡された書類を投げつけてやりたくなったのをぐっと堪え、不気味なほどの完璧な笑顔を添えて差し出された、ほんの5分前に提出したばかりの書類を課長から受け取る。


引きつりそうな頬を、つり上がりそうな眉を抑えるために、表情筋に全神経を集中。

ひくり、と口角が曲がりそうなのをきゅっと唇を閉じることでやり過ごして、ぺこりと一礼することを忘れずに課長に背を向けて、課長のブースを出た。




原皐月(ハラ サツキ)、本日も完敗。


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