セックス·フレンド【完結】
「…もしもし?」


電話の向こう側で、隆也が息を飲むのがわかった。


そして、彼は、まずこう言った。


「…良かった」


「え?」


「もう電話に出てくれないような気がしてたから」


ひどく弱々しい隆也の声を聞いた瞬間、あたしの決意は、あっけなく崩れた。



「ばかだぁ。あたしが隆也を無視する理由なんかないじゃない」


そう言ってしまう自分の弱さが憎い。


「そ、そうだよな。何言ってんだろ、俺」


隆也は安心したようにため息をつき、それから、改めて新年の挨拶をした。


「今年もよろしくな」


今年も、か。


「うん。よろしくね」


あたしは、あたしに負けた。



どこまでも隆也を嫌いになれない、あたしに…。
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