セックス·フレンド【完結】
「550円になります」


差し出した袋の中を見て、


「これ、違うよ。10mgじゃなくて6mgを頼んだんだけど」


と隆也は言った。


「うそ?ごめんね。ええっと…」


商品を取り消すにはどうしたらいいんだっけ?


おろおろとレジボタンを探すあたしに、隆也は、

「いや、今日はこれでいい」


そう言ってくれた。


「次は間違うなよ」


とも。


隆也は、袋を高く掲げると手を振って帰って行った。


次は間違うなよ


つまり、また来てくれるということだろうか?


たった3日間の研修で早くも根をあげていたあたしは、隆也のその一言で、そこでのバイトを続ける決意をした。


また、彼に会えるかもしれない。


それだけの理由だった。
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