セックス·フレンド【完結】
思えば、あたしはあまりにも悠長に構えすぎた。


隆也の傷口につけ込み、癒やし、慰め、信頼を得さえすればまた昔のような関係に戻ると信じていた。


でも、それじゃいつまでたっても彼を手に入れることはできない。


一番手っ取り早い方法は、邪魔者を消すことだということに、なぜ気づけなかったのだろう。


隆也への思いが切実で真っ直ぐなほど、竹内ミキへの憎しみは屈折して募る。


隆也に会えない時間、あたしは竹内ミキをどう追い詰めようかと、そのことばかりに心を砕いていた。


そして、竹内ミキの困惑する様子を思い浮かべてはほくそ笑んだ。


でも、ふと我に返った瞬間、あたしは、自分が怖くなった。


あたしはなんて最低な人間なのかと自己嫌悪に陥った。


でも、最低な人間になることで隆也が手に入るなら、お安いものだ。


嫌な女になるのに怯えていたら、恋人のいる男のセックスフレンドなんかやっていられない。
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