セックス·フレンド【完結】
「いいなぁ、結婚…」


自然とそんな言葉が口から漏れた。


愛する人と暮らし、その人の子供を産み、共に育てる。


ちょっと前までは、「つまらないもの」或いは「いつか、そのうち訪れるもの」と漠然と考えていた結婚生活。


でも、今のあたしは、それに特別な憧れを抱いている。


勿論、相手は隆也だ。


彼の仕事の帰りを待ち、彼のために食事をこしらえ、彼の着る洋服や布団を洗濯して、彼の子供を産む。


その生活をすでに手に入れた人にはわからない、当たり前の幸福に強く憧れる。



そんな日が来ることを、あたしは切に願っていた。


「美杉がそんなこと言うなんて思わなかった。だってさ、ちょっと前まで30までは自由でいたいとか言わなかった?」


そんなことを言ったかもしれない。


でも、そんな風に考えていたのは、将来ともにしたい人と巡り会えていなかったからだ。


でも、今は違う。


そう思いながらも、あたしは、「そうだっけ?」ととぼけてみせた。
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