セックス·フレンド【完結】
竹内ミキがアパートを出てから、だいぶたった。

そろそろ、あたしがそこへ行ってもいい頃ではないか?


そりゃ、2人の暮らした場所へ上がり込むことに全く抵抗がないと言えば嘘にもなる。


きっと、そこには、隆也と竹内ミキの暮らした証がいくつも残されていて、ほんの些細な、例えば、家具の位置や、絨毯の汚れ、埃一粒を見ただけで、あたしは打ちのめされるだろう。


けれど…。


あたしは、すっかり馴染み深くなったラブホテルの部屋を一別した。


白くのりの利いたシーツ、ベッドの上にぶら下がった安っぽいレースのカーテンに、真っ赤なソファー。


あたしは、それでも、隆也の部屋へ行きたかった。


竹内ミキがいなくなったにもかかわらず、あたしを部屋にあげられないのは、彼女との思い出に、あたしが踏み込む余地はないということなのだろうか?
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