セックス·フレンド【完結】
「どうかされました?」


店員に声をかけられても、なお、あたしは写真から目を離せなかった。


「お知り合いでもいらっしゃいました?」


いつの間にか、カップルはいなくなっていた。


店員が、先ほど撮ったカップルの写真を、コルクボードにとめる。


その背後から、


「…この」


と、震えた指で、あたしは、隆也と竹内ミキの写真を指差した。


「…あぁ、はい。えっと、確か古谷様ですね。一昨日いらしたばかりなのでよく覚えてますよ。私が担当いたしました」


店員が自信たっぷりの顔で微笑んだ。


一昨日?


くらくらした。


「新婦様のご友人ですか?」


聞かれて、あたしは頷いた。


「そうですか。おめでとうございます」


おめでとうございます


ぐにゃりと視界が歪む。

店員が、あたしに何か話しかけている。


けど、彼女の声は、もう届かなかった。
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