セックス·フレンド【完結】
「や、やめてよ!」


これ以上聞きたくないとばかりに、あたしは耳を押さえた。


友達なら、どうして、傷ついたあたしを慰めようとしないのだろう。


なんて、残酷なことを言うのだろう?


行き場のない悲しみや怒りが、目の前にいる友人に向けられ吹き出す。


でも、詩織は冷静だった。


あたしの手を耳から引き離すと、さらに続けた。


「美杉、現実を見てよ?確かに古谷君と美杉は付き合ってた。でも、それは昔のことでしょう?美杉を一番に愛してくれた古谷君はもういないの!わかる?今の古谷君は、美杉を利用しているだけじゃない?美杉は騙されていたのよ!もう、昔の古谷君の幻影を追い求めるのはやめて!」


「そんなわけない!隆也は昔と少しも変わってなんかない!きっと、きっと、何か事情があったのよ!」



そうだ。何か理由があるはずだ。


でなければ、隆也が…。あの優しい隆也がこんな酷い仕打ちをするわけがない。


「詩織、あたしの携帯はどこ?あたし、話をしてみるわ。隆也とも竹内ミキとも。それがいいわ」

「ちょっと、やめなさい」

ベッドから跳ね起き、かばんをひっくり返すあたしを、詩織が羽交い締めにした。


「放してよ!」


「放さない!そんなことをしても何もならない」

「詩織にはわからない!何も知らないくせに」


「痛いっ」


もみ合っているうちに、あたしは、勢いよく詩織を突き飛ばしてしまった。


転んだ詩織が、腰のあたりをさすりながらうずくまっている。
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