セックス·フレンド【完結】
「…もしもし?」


大好きな隆也。
低くて穏やかな隆也の声。


聞いた途端、あたしは言葉に詰まってしまう。


「美杉、だろ?」


「そう。美杉です」


たったこれだけの会話で、あたしは、彼との間にできた深い溝を感じ取ってしまった。


「遅くに、ごめんなさい」

「いや…」


電話口から、車の音が聞こえてくる。


彼もまた、同じように外で話しをしているのだろう。


そう離れていない場所で、同じ空を見上げているはずなのに、でも、とても遠い。


「連絡しなきゃって、ずっと思ってた」


「うん…」


言葉を区切るように、隆也は慎重に話し始めた。


それだけで、苦しい。


いつも通り、「久しぶり!元気だった?」と聞いてはくれない。


今日のことが悪い夢だったならば、これから先、あたしは一生悪夢しか見なくてもいい。


そう思った。
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