セックス·フレンド【完結】
「美杉が気持ちを押し殺しながら俺と一緒にいること、本当はわかってた。時折見せる寂しそうな顔にも気がついていたんだ」


いきなり確信をつかれて、あたしは言葉を失った。


隆也は気づいていた。


溢れんばかりの好きも、切ない愛おしさも。
痛みや苦しみでさえ。


それなのに、知らないふりをしていたのだ。


「美杉といる時間は本当に楽しかったし、和んだ。でも、それとは別に彼女のことも大切だった。最低だって思うだろうけど、正直な気持ち、美杉も彼女も手放したくなかった。だから、しらんふりした」


いたたまれない思いに押しつぶされそうになる。

あたしは、しゃがんで体を小さく折り曲げた。


でなければ、泥人形のようにぼろぼろと崩れてしまいそうだった。
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