セックス·フレンド【完結】
「退院してすぐ、彼女が妊娠しているのを知った」


堪えきれない嗚咽を止めようと、口を抑えた。


悲しみの感情に支配されたあたしの体。


もう少しだけ、こらえて。


せめて、彼の口から真実が語られるまで。


どうか、神様…。


ほとんど涙で霞んだ月を見上げ、あたしは願う。


あたしが、隆也の好きなあたしでいられますように。


感覚を失った両足に、ぐっと力を込めた。


隆也は続けた。


「彼女は、別れを考えていた。子供も俺に内緒でおろすつもりだったって。でも、どうしてもできなかった。彼女は美杉よりずっと強い子なんだ。その彼女が弱々しく泣きじゃくるのを、ほってはおけなかった…」


「…そよ」


そこで、あたしは、喉の奥から声を絞り出して叫んだ。


「そんなの、嘘!隆也は、竹内さんのことが好きだった。あたしと再会してからも、ずっと、ずっと、愛していたのは竹内さんだったのよ!」


それだけ言うと、あたしは堰を切ったように泣いた。
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