セックス·フレンド【完結】
「西村君に話したのが間違いだった」


誰かに話して助けてもらおうなんて、甘かった。

「ありがとう。いちごちゃんとお幸せに」


そう吐き捨て、車から降りようとしたあたしの腕を西村君が引き寄せた。

「待って!」


次の瞬間、あたしは、西村君に抱きすくめられた。


「こんなに痩せちゃって…。バカな女だな」


あたしを抱く西村君の腕に力が込められていく。髪の毛を撫でられると、胸が熱くなる。


そのくせ、求めているのはこの指使いではないと、とっさに判断してしまう自分がいる。


あたしは、どこまでも隆也を求めている。


体中の細胞から、髪の毛の先までも。


「奪い返す自信も、愛人になってまでそばにいる覚悟もないのなら、いっそめちゃくちゃにしちゃいな?」


西村がぽつりつぶやいた。


「めちゃくちゃ、に?」


「うん。そいつの披露宴に現れて全部ぶちまけちゃえよ。こいつは、あたしと新婦、二股かけてましたって。そんで、呆然とする男の横っツラぶん殴ってやればいいよ」


「ふふっ。なんだか外国の映画みたい」


ようやく笑い声をたてたあたしにつられて、西村君も笑った。
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