セックス·フレンド【完結】
その日はやってきた。


隆也の披露宴当日、あたしは、勤めていた美容院に予約を入れた。


休暇を言い渡されてから、初めて先生と顔を合わせる。


先生は、変わり果てたあたしの姿に驚きを隠せなかった。


あたしは、痩せすぎていた。


鏡に写る自分の顔に、あたし自身が驚くほど以前とは違う。


先生は、それでも何も聞かなかった。


「早く戻ってきてちょうだいね。また新しい弟子に1から教える気力なんかないんだから」


むしろ、そう言って、励ましてくれた。


あたしはまだ必要とされている。


そう思うと救われた。


全てが終わったら、きっと、また戻ってくる。


あたしは、声に出さず、心の中でつぶやいた。



「友達の結婚式?楽しんでくるのよ」


帰り際、先生にそう言われて、あたしは、曖昧に言葉を濁した。
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