セックス·フレンド【完結】
ついて行こうか?と聞いた西村君を振り切って、あたしは一人、ホテルに足を踏み入れた。


会場はエスカレーターを上がってすぐの二階の大広間。


【古谷家·竹内家披露宴】の文字を見た時は、さすがに動機がした。


いよいよ、現実味が帯びたと怯んだ。


でも、あたしは逃げなかった。


会場入り口には、二人の門出を祝うために駆けつけた人で溢れていた。


その中に、あたしは何食わぬ顔をして紛れる。


中には知っている顔も多くいて、あたしは、うつむいたり、トイレに駆け込んだりして身を隠さなければならなかった。


詩織もいた。


心細さに声をかけたかったが、無論できるはずもない。


詩織の顔をまともに見ることなんて、できない。
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