セックス·フレンド【完結】
「いい加減にしてくれ!」


そう叫ぶや否や、隆也はあたしの腕をつかみ、引きずるようにして会場の外へ連れ出した。


人のいない所へ来ると、あたしの両肩に手を置き、真っ直ぐに見つめてこう言った。


「頼むから、もう俺の前から消えてくれ。俺のことが好きなら、もう二度と俺の目の前に現れないでくれ。それが、今美杉が俺のためにできる唯一のことなんだ」


それだけ言うと、隆也は会場の中へ消えて行った。


あたしが隆也のためにできるのは、隆也の前から消えることだけ。



あたしは、ふらふらと立ち上がると試合会場を後にした。


すっかり気の動転した隆也は、その後の試合で、嘘のようにぼろ負けし、全国大会行きの切符を逃した。


そして、あたしは…。


その夜、精神科から処方されていた睡眠薬を大量に飲んだ。
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