セックス·フレンド【完結】
しばらくぼんやりしていたが、携帯の呼び出し音に、あたしの意識が引き戻された。


画面に浮かんでいたのは、二度と会うことのないと思っていた男の名前。

古谷隆也の文字。


繰り返し鳴る着信音に、あたしは、やはり応えずにはいられなかった。


「もしもし?隆也?」


「…ああ」


隆也の声は、彼の背後にいるたくさんの人の声にかき消されそうに小さかったが、それでも、あたしは、はっきりと隆也の声だけを判別できてしまう。


全身で隆也を感じろうとしてしまう。


好きだから。


大好きだから。


ついさっき、自分以外の人と、永遠の愛を誓ったばかりの男が、こんなにも愛おしいなんて。


あたしはまだ、彼に恋をしている。


激しく、熱く。
< 311 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop