セックス·フレンド【完結】
「じゃあ、これで…」


「ま、待って!」


電話を切ろうとした隆也を、あたしは咄嗟に呼び止めた。


これが、最後。


隆也の声を聞くことのできる最後のチャンス。


あたしは、彼の声をこの耳に焼き付けようと、強く電話を押し付けた。


呼び止めたものの、でも、言葉が出なかった。


正確には、言えなかった。


だって、もう、あたしの言いたいことは、伝えたいことは、永遠に届かない…。


それで、ついこう言った。


「幸せになってね」


自分でも、情けないほど間の抜けたことを言ってしまっと思う。


幸せになってね


なんて…。


柄にもない。
本心なんかじゃない。


好きな人の幸せを、心の底から願えるほど、あたしはいい女なんかじゃない。


「ありがとう。美杉もな」


でも、隆也は、素直にあたしの言葉を受け止めた。


美杉もなんて、よく言うわよ。


あたしの幸せは…。

ねぇ、隆也?
あなたの、手の中に握られていたんだから。


気づいてるんでしょう?

ねぇ、隆也…。


わかってるんでしょう?あたしの気持ち…。
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