セックス·フレンド【完結】
それでも、あたしは電話を切ることができずにいた。


なんて未練がましいのだろう。


なんてバカなんだろう。

でも、もう少し…。


もう少しだけ。


あたしは、幾度となくあたし自身と戦った。


でも、そろそろ限界だった。


体が小刻みに震え、意識を何度も失いそうになりながら、あたしは最後の言葉を隆也に告げた。


「奥様を、大切にね」


さよなら隆也とは、でも、どうしても言えなかった。


「ありがとうございます。大切にします」


酷くかしこまった調子で、隆也は言った。


今までで一番残酷な言葉を投げつけたことに、彼は一生気づかないだろう。
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