セックス·フレンド【完結】
「世間て、狭いね」


これが、全てを聞いた後の詩織の述べた感想だった。


「そうだよね、もうびっくり!」


詩織には、成り行きだけを説明した。


偶然隆也と再会し、肉体関係を持ってしまった、と。


もう一度、彼を振り向かせようとしているとは、でも、どうしても言えなかった。


明るく振る舞うあたしに、詩織は「大丈夫なの?」と聞いた。



「大丈夫って?」


「だって、ほら、あの時の美杉ってさ…」


詩織が言葉を濁す。


彼女は、すべてを知っている。


あたしと隆也が付き合っていたことも、壊れていく過程も、別れたあとのことも。


だから、心配しているのだ。また、あたしがおかしくなってしまうんじゃないかと、恐れている。


「全然、大丈夫。今はさ、昔みたいにむちゃするほど若くないし。それに…」


「それに?」


「きちんと、割り切ってるから」


「…だといいけど」


疑い深そうに詩織はため息をついた。
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