セックス·フレンド【完結】
「竹内さんは悪い子じゃないよ。お客様からの評判もいいし。古谷君もいい人だと思う。でも、私にはそんなことどうでもいいの。美杉さえ傷つかないのなら」


「詩織…」


「美杉は大事な友達だから。無理はしてほしくないんだ」


あたしの胸の内を見透かしたように、詩織が優しく言った。


思わず泣きそうになった。


こんなあたしを見捨てることなく、叱ることもせず、一生懸命に諭そうとする詩織の気持が痛いほど伝わった。


「本当に、古谷君のことは…」


「だから、今はなんとも思ってないんだって!」


つい言い方がきつくなり、あたしは息をのんだ。


「…なら、あまり深入りしないことだよ。向こうにも恋人がいるわけだし…」


「そう、だね…」



でも、今は、その言葉に従うことはできない。


「大丈夫。別にどうこうしようなんて考えない。ただ、ちょっと気になっただけだから」


「わかった…」


そこで、電話の向こうから赤ん坊の元気な泣き声が聞こえてきた。


「詩織、今日はありがとう」


「ううん。何かあったら、すぐに連絡して」


「了解!」


産後の友人に気遣わせてしまったことを申し訳なく思いながら、あたしは電話を切った。
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