カレの愛は増すばかり。

「なーんて。ジョークですよ。
ヴァンパイアジョーク。」


……そんなジョーク初めて聞いた。


私は『はは、』と愛想笑いで返すと、沸き立てのお湯でコーヒーと紅茶をそれぞれ一杯ずつ淹れて月瀬さんの前のテーブルに置いた。


「どちらにしますか?」

「わざわざ両方淹れてくれたんですね。では、紅茶の方で。」

「砂糖とミルク、良かったらどうぞ。」

「ありがとうございます。」


月瀬さんは一言そうお礼を言って、砂糖とミルクはそのままに、まずはティーカップを手に取ると上品な仕草で香りを嗅いだ。


「いい香りですね。」

「そう、ですか?」


普通に『リプ●ン』のティーバッグのヤツなんだけど。


「貴女の香りがします。」

「………はは。」


思わず飛び出す、本日二度目の愛想笑い。

パジャマの下の肌がゾワゾワと粟立ち、咄嗟に両肩を抱く。


キモい。


「どうしました?」

「いえ、少し寒くて。」


まさか自分が原因だとも知らずに心配そうに覗き込む月瀬さんに、私もその向かいに腰をおろして、誤魔化す様にコーヒーに口をつけた。

じんわりと口の中に広がる苦味により、ようやく私の頭は完全に覚醒していく。


「えと、月瀬さん、でいいですよね?」

「はい、月瀬です。月瀬類。
柊一とは大学の頃からの付き合いでして。」

「大学…。」
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