カレの愛は増すばかり。

その大学というのが、どうにも月瀬さんを疑ってしまう一番の原因だ。


どうみても大学を卒業して何年も経つ人間には見えない。

今在学中だと言われてもおかしくない程、彼は若く見える。


それにこの容姿。

全く訛りのない綺麗な日本語を操るけれど、美しい金に輝く髪や宝石のような青緑色の瞳、透き通るような白い肌は日本人のそれではない。


「…失礼ですが、国籍とお歳は?」

「国籍は、一応日本という設定です。」


“一応”?“設定”…?


「年齢は…、えーと、フランス革命時のマリーアントワネットが処刑された年だから…」

「フランス革命?!」


『イチ、ニー…』と真剣な表情で指折り数える月瀬さんに、私は持っていたコーヒーのカップを落としてしまった。


「あっ、つ…!!」

「わっ!大丈夫ですか?!」


毛玉だらけのグレーのパジャマに、じわじわと黒い染みが広がる。


「タ、タオルか何か…っ!」

「大丈夫です!ごめんなさい、取り乱してしまって。
ちょっと着替えてきますね。」


慌てたように立ち上がった月瀬さんを何とか制して、私は洗面台へ向かった。


お、落ち着け。

どうせまた、ジョークか何かだ。


洗面台の鏡に映る自分に、言い聞かせるようにして何度も唱える。


でも、絶対にあり得ないことなのに、何となく冗談に聞こえないのは何故だろう…。


取り合えず汚れてしまったパジャマを軽くもみ洗いして洗濯機に放り込むと、適当なニットとデニムに着替えてリビングへ戻った。
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