カレの愛は増すばかり。

いかにも心配そうに眉尻を下げて待ってくれていた月瀬さんに、私は軽く会釈をしつつ先程の場所へ座る。


「すみません。お待たせしました。」

「火傷とかは…、」

「大丈夫でした。汚れた服も大したものではありませんし。」

「良かった…。」


心底ホッとしたように胸を撫で下ろすと、月瀬さんは誰もがうっとりしそうな甘い笑顔で言った。


「貴女のその白く美しい肌にもし傷でもついてしまったらと思うと、僕は生きた心地がしませんでした。」

「はぁ…。あはは。」


いや、ホントキモい。


私は乾いた笑いであしらうと、気を取り直して、もう一度先程の話の続きへと話題を戻した。


「ところで、あの、さっきの話なんですけど…。」

「あぁ。僕の年齢ですよね?
すみません。長く生きているとどうにも忘れてしまって。」

「長く、生きてこられたんですか…?」

「そうですね。先程数えてみたんですけど、221歳でした。」

「にひゃ…っっ?!」


再び現実離れしたセリフが飛び出して、思わず声が裏返ってしまう。


落ち着け、落ち着け。

だからあり得ないって。


「あの…、冗談がお好きなんですね。」

「冗談?いえ、確かに冗談は嫌いじゃありませんが、今のは至って本気ですよ。」

「だってそれじゃあ…、」


まるで、


「まるで人間じゃない?」


その瞬間、月瀬さんは私が心の中で思ったことの続きを正確に口にした。
< 12 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop