カレの愛は増すばかり。

その表情はどこか色気さえ感じる程の完璧な笑みを湛え、青緑色だった瞳は赤く変わり、妖しく光っている。


「ひ、瞳の色が、」

「貴女の考えている通りです。僕は人間ではありません。」

「そんなはず…、」

「おかしいとは思いませんか?
僕のこの容姿や年齢。人のそれではないと、そう思いませんか?」


淡々と、何でもないことのように月瀬さんは続ける。

確かに変わった瞳の色は、まるで血液のように赤く瑞々しい。


こんなの、あり得ない。


「まだ信じられませんか?
では、証拠を見せましょう。」


そう言って月瀬さんは立ち上がると、私の傍まで歩を進めた。

じりじりと詰められていく距離に、私は座ったまま後退りをする。


ついに壁際まで追い詰められて月瀬さんを見上げると、人間とは思えないほど冷たい手が私の頬を撫でた。


「ひ…っ、」

「じっとして。」


そのまま肩にかかる私の長い黒髪を掻き分けて、露になった首筋に月瀬さんは恍惚の表情を浮かべる。

半月状に歪んだ口元から僅かに覗いた白い牙を確認すると、私は身体を強張らせた。


………吸血鬼だ。


徐々に首筋に近づいてくる月瀬さんの唇に覚悟を決め、ギュッと目をつぶった

その時、


チュッ


「…………へ?」
< 13 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop