カレの愛は増すばかり。
その表情はどこか色気さえ感じる程の完璧な笑みを湛え、青緑色だった瞳は赤く変わり、妖しく光っている。
「ひ、瞳の色が、」
「貴女の考えている通りです。僕は人間ではありません。」
「そんなはず…、」
「おかしいとは思いませんか?
僕のこの容姿や年齢。人のそれではないと、そう思いませんか?」
淡々と、何でもないことのように月瀬さんは続ける。
確かに変わった瞳の色は、まるで血液のように赤く瑞々しい。
こんなの、あり得ない。
「まだ信じられませんか?
では、証拠を見せましょう。」
そう言って月瀬さんは立ち上がると、私の傍まで歩を進めた。
じりじりと詰められていく距離に、私は座ったまま後退りをする。
ついに壁際まで追い詰められて月瀬さんを見上げると、人間とは思えないほど冷たい手が私の頬を撫でた。
「ひ…っ、」
「じっとして。」
そのまま肩にかかる私の長い黒髪を掻き分けて、露になった首筋に月瀬さんは恍惚の表情を浮かべる。
半月状に歪んだ口元から僅かに覗いた白い牙を確認すると、私は身体を強張らせた。
………吸血鬼だ。
徐々に首筋に近づいてくる月瀬さんの唇に覚悟を決め、ギュッと目をつぶった
その時、
チュッ
「…………へ?」