カレの愛は増すばかり。
「ごめ…、なさいっ。ごめんなさい…っ!」
「…謝らないでください。貴女を泣かせたくないのにこんなに泣かせて、僕は…、」
頬を流れる涙の粒を、月瀬さんは指で優しく受け止めて拭ってくれる。
「200年も生きているくせに、貴女の気持ちが分からないんです。
僕が人でないのは、長く生きているからでも、牙があるからでもない。僕には欠陥がある。」
「欠陥…?」
「ヴァンパイアは人よりも本能や欲が強いんです。
貴女が泣いていても、僕は貴女を手に入れたい。もし僕に人の血が混じっていなければ、きっと僕は、」
『貴女を殺しています』と、月瀬さんは悲しそうに瞳を赤く濡らして言った。
月瀬さんの手が離れると、冷えた涙が少しずつ頬の熱を奪っていく。
「今日はこれで失礼します。」
「父には…、」
「柊一には、また後日改めて挨拶に伺わせてください。」
月瀬さんはそう言うと、私の髪を一束掬って軽くキスをして立ち上がった。
真っ黒のマントを揺らして玄関へ向かう月瀬さんの背中を、私も急いで追いかける。
「月瀬さんっ!」
「…?はい。」
私の呼び掛けに振り返った月瀬さんの瞳は、綺麗な青緑色をしていた。
「月瀬さんは、どうしてそんなに私のことを…。」
「僕は、ずっと前から貴女のことを知っています。」
「私を…、」
「会えなくても、ずっと貴女を思っていました。貴女に流れるその血が、欲しくて堪らなかった。」
「吸血行為はしたくないんじゃ、」
「そういう意味ではありませんよ。」
言いながらクスッと笑うと、再び私の頬へ手を伸ばす。