カレの愛は増すばかり。
「あまり似ていませんね。」
「え?」
その手は私の頬を愛おしげに何度も撫でるのに、月瀬さんは切なく眉を歪めた。
「貴女は柊一によく似ている。」
「…月瀬さんは、父の友人なんですよね?」
「そう、ですね。彼は良い人間でしたから。
でも…、
僕は彼に嫉妬していた。」
そう言った月瀬さんの瞳は、冷たく私を見つめていた。
背筋がゾクリと冷える感覚がする。
「またお会いしましょう。
その時はきっと、貴女を迎えに来ます。」
『では』と丁寧にお辞儀をして帰っていった月瀬さんに、私はその場にヘナヘナとへたり込んだ。
さっきの私を見る目、明らかに好意とは違った。
父との手紙ではきっとすごく親しい人なんだと思っていたけれど、そうじゃない。
あの人は父のことを…
私は寝室へ向かうと、そこにある母の仏壇に、母の写真と隣同士で飾ってある父の写真を手に取った。
この父の写真は、今年の最後の父の日に、一緒に私の作った料理を食べた時に撮ったものだ。
この時はまさかもうすぐ死んでしまうなんて、思っても見なかった。
こんなに幸せそうに笑っていたのに。
「ねぇ、お父さん。月瀬さんが来たよ。
あの人、お父さんのこと嫌いなのかな…。」
いくら聞いてみても、返事なんて聞こえてこない。
私は父の写真を抱き締めて、そのまま横になった。
畳の香りが、少しだけ心を落ち着かせてくれる。
破れた障子の隙間から微かに差し込んでくる光が眩しくて、私はゆっくりと瞳を閉じた。
ねぇ、お父さん。
私はどうすればいい…?