カレの愛は増すばかり。
「それより、何だ?その変な格好は。」
「あぁ、コレ?どう?このくらい分かりやすい方が、信じてもらえると思って。」
僕はマントの端を片手に持つと、それで口元を隠して笑った。
いかにも人間の想像するヴァンパイアの姿に寄せてみたつもりだ。
「……寧ろ胡散臭く見えるけど。
どうしたんだ?そのマント。」
「ド●キホーテで買ってきた。」
「ド●キってそんなもんも売ってんのか。」
『凄いな』と感心したように呟くと、クローシュは特に興味無さそうにマントを一瞥した。
「それで、どうだった?美しく成長したあの子に、初めてちゃんと会った感想は。」
「愛らしかったよ。凄く。
いつも遠くからしか見ることが叶わなかったから…。久しぶりに触れたんだ、彼女に。細くて、柔らかくて、思わず壊してしまいそうで、」
「お前が言うと、本当に壊しそうで怖いな。」
クローシュは金色の瞳を細めると、恐ろしそうに僕を見た。
コロコロよく表情の変わる猫だ。
サーカスにでも売り飛ばしたら、きっと良い値がつくだろう。
「お前、あの子をどうするつもりだ?」
「あぁ、一緒に暮らそうと思って。ここを出て僕の家へおいでって言った。」
「なっ!あの子それを了承したのか?!」
「まさか。このアパートが拠り所なんだって泣かれたよ。」
僕がそう言うと、クローシュは呆れたように溜め息をついた。
「当然だな。父親が死んだばかりのあの子にとって、その父親とずっと過ごしてきたここはきっと大切な場所だ。
突然お前みたいな見たことも会ったこともないヤツに言われて、付いていく方がおかしい。」
「…僕はずっと彼女を見てきたのに、彼女にとって僕は、見たことも会ったこともないヤツなのか。」
「覚えてるわけないだろ。そもそもそういう風に仕向けたのはお前だ。
お前みたいなの、今じゃ何て言うか知ってるか?ストーカーだよ。ストーカー。」