カレの愛は増すばかり。
こ、この人!
大家さんをすでに誘惑してる…!!
恐らくその彼女の様子じゃあ、これから私が何を言ったとしても通じない。
外堀から固めている。
してやられたとは、正にこの事だ。
「じゃあ、満。行こうか。」
「何言ってるんですか!一緒に住むなんて、本気で言ってるんですか?!」
「清岡さん!いつまで意地張ってるの!!
そもそも私は、まだ高校生のアナタがこれから誰の力も借りずに一人で生きていくなんて、無理があると思っていたのよ。素直になって、彼に甘えたら良いじゃない!」
「ちょっとややこしくなるから大家さんは黙っていてくださいっ!!」
本気で心配してくれているのかどうかは分からないが、大家さんは何とか月瀬さんを私の部屋に住まわせたいらしい。
ここの管理人がこう言っているんじゃ、完全に分が悪い。
ギャアギャア騒ぐ私たちに引っ越し業者さん達は怖ず怖ずと近づくと、気まずそうに声をかけた。
「あのぉ~、」
「何ですか?!」
「いや、何か揉めているみたいなんですけど、取りあえず荷物全部運び込んでしまいましたが…。」
「え…っ!!」
『では、次があるので』と丁寧にお辞儀をすると、業者さん達はさっさとトラックに乗り込んでいく。
「ご苦労様でした。」
月瀬さんは爽やかな笑顔でそう言うと、走り去っていく引っ越し業者のトラックに手を振った。
いや、ちょっと待って。
本当にここに住むつもり…?!
「あらぁ~。荷物運び込まれちゃったんじゃ仕方ないわねぇ。
それに、月瀬さん行くところ無いんでしょう?」
「えぇ。前住んでいた所はもう解約してしまったので。」
呆然と立ち尽くす私の背後で、やけに芝居がかった大家さんと月瀬さんの声が聞こえる。