カレの愛は増すばかり。
「まぁ、それはお気の毒だわ。
じゃあ、これ鍵。仲良くするのよ。」
「はい。ありがとうございます。」
パタン。と扉の閉まる音が虚しく響くと、私と月瀬さんは何も解決していないまま、この寒空の下、二人っきりで取り残されてしまった。
一体何がお気の毒なのか。
この男が勝手にやったことに、お気の毒もクソもない。
大体、自称・ヴァンパイアの只でさえ怪しい男が、女の、しかも女子高生の一人暮らしの家に勝手に引っ越してきておいて、寧ろお気の毒は私の方じゃないか!
あり得ない……。
こんなのお父さんが見てたら絶対泣く。
私は自分が泣きたくなる気持ちを必死で堪えて月瀬さんを振り返ると、怒りを込めて睨み付けた。
月瀬さんはというと、そんな私の様子にも穏やかな笑みを浮かべている。
「どうしました?」
「『どうしました?』じゃありませんよ!
本当にどういうつもりですか?!」
「僕は貴女の保護者ですから、一緒に暮らすのは自然なことでしょう?」
「全然自然じゃありません!それに、はっきり要らないと言ったはずです。」
実際、月瀬さんが私の保護者になるだなんて認めた覚えはないし、頼んでもいない。
少し変わった人だけれど、父の友人ならそんなに悪い人じゃないだろうと勝手に思い込んでいた。
勿論、私のことを心配してくれているのは本当だろうし、悪い人とは言い切れない。
けれどこんなの、明らかに行きすぎている。
「突然ウチに住むなんて言われても困ります。今日のところは帰っていただけませんか。」
「…でも僕、先程言った通り本当に帰る家がないのですが、」
「知りません。大人なんですから、
ホテルにでも泊まったらいいじゃないですか。」