カレの愛は増すばかり。
私はそう言い捨てると、月瀬さんに構わずアパートの階段を上った。
朝からとんでもないことに巻き込まれたおかげで、まだ少し眠い。
部屋に入ったら、もう一時間寝よう。
そんなことを考えながら玄関の扉を開けると、廊下にはいくつもの段ボール箱が積み重なっていた。
………そうだった。
引っ越し業者さんがすでに荷物を運び込んだ後だったの、すっかり忘れてた。
思わず玄関先で呆然と立ち尽くしていると、いつの間にか付いてきていた月瀬さんが背後からひょっこり顔を覗かせる。
「そういえばそうでしたね。」
「…月瀬さんがやった癖に何言ってるんですか。」
「僕じゃないですよ。引っ越し屋さんです。」
ニッコリ笑ってそう言う月瀬さんに、私は怒りが込み上げるのを、何とか大きく息を吐くことで堪えた。
「これ、どうにかしてください。」
「そうですねぇ。どうしましょうか。
取り合えず、お茶でも飲みます?」
「…飲みませんが。」
じっと月瀬さんを睨みながら言うと、月瀬さんは眉を下げて苦笑する。
「まぁ、そう言わずに。実はお嬢さんに見て欲しいものがあるんです。」
月瀬さんはそう言うと、私の腕をとって私よりも先に中へ歩を進めた。
そのままリビングに引っ張り込まれると、月瀬さんは嬉しそうに私の方を見る。
「どうですか?」
「どうって…、何、」
言いながら月瀬さんの指さす先を見ると、見覚えのない真っ白なソファーがあった。