カレの愛は増すばかり。
私は思わず後ずさりながら聞くと、月瀬さんは妖しく笑って唇に人差し指を当てる。
「秘密です。」
………その秘密が怖い。
「とにかく、そんなことじゃあ私は一緒に暮らそうとは思いません!
折角買っていただいて申し訳ないのですが、ソファーやテレビは持ち帰ってください。」
「でも、持ち帰る家がありませんよ?」
「…では、家具くらいなら暫くここで預かります。その代わり、月瀬さんはホテルへどうぞ。
それに買ってもらいっぱなしも嫌なので、きちんと代金も支払わせてください。」
言いながら勢いよく玄関の方を指差して促すと、まるで捨てられた子犬のようにしゅんと項垂れた。
何だかこっちが悪いみたいじゃないか…。
「…分かりました。そこまで嫌なら出直します。」
「出直されても一緒に暮らしませんけど。」
「ですが、代金を支払うと言っても、今月分の家賃も支払えない貴女には難しいと思いますが…。」
「……それは、
っていうか、それも!何で知ってるんですか?!」
「大家さんが言ってました。この先も払えなくなるようなことがあるなら、考えなくてはいけない、とも。
あ、安心してください。今月分は僕が払いましたので。」
ぱっと顔を上げて誇らしげに笑う月瀬さんに、私はサーっと顔が青くなる。
確かに、今月分の家賃は支払えていなかった。
父が死んで、お葬式やら何やらは吉井さんに手伝ってもらったのだけど、その費用ばかりはさすがに頼めなかった。
吉井さんは出してくれると言ってくれたのだけれど、私が申し訳なくて断ってしまったのだ。
それに今月は四十九日の法事もあったし、元々そこまで蓄えのなかった現在の預金口座は、文字通りすっからかん。